「ちょっと待ちなさいよ
莉緒はもう帰ってこないわ」

「うるせえな!
……って帰ってこないってどういうことだよ」

俺は振り返る

春はにやりと笑って肩をすくめた

「だって死んだもの」

なんだって?

「は?」

この女は何を言っている?
死んだ?

意味がわからねえ

「知らないの?
スポーツバーを出た大通りで事故があったのよ」

「何?」

事故ってどういうことだよ

手に持っている携帯がけたたましく鳴った

俺は驚いて、体がびくっとなる

ゆっくりと持ち上げると、液晶の画面を見た

『海堂彰吾』と表示されていた

嘘…だろ?

莉緒が事故に遭う?

俺は春を見たまま、携帯を耳にあてた

「はい」

『桜嗣、どこにいるんだ?』

「莉緒を探して……」

『莉緒さんなら今、病院にいるから……』

嘘…だろ?
病院って何だよ

彰吾の声が聞こえねえよ

おいっ!
俺に何を話してる?

莉緒はなんで病院にいるんだよ

腹の子は?

俺たちの子は無事なのかよ

莉緒は?