そろそろ母親が来るころなのに、母親が来ない
新しい男ができて、俺の存在を忘れたのだろうか?

母親が用意した食事はとうに底をつき、水もない

俺はこのまま死んでいくのか?

どれくらいの月日が過ぎ
どれくらい時を無駄にしたのか

大人になった姉貴を見て、俺は随分と長い時間をこの密室で過ごしたのだと理解した

母親が病死し、遺産相続のために別荘を見に来てたらしい

俺を発見したのは姉貴の他に、山崎という秘書の男だった

姉貴は酷く狼狽していたよ
俺だとは気付いてくれなかった

そうだよな
部屋のドアを開けたら、髭面の男がベッドに横たわっていたんだ

俺はすぐにわかったよ
姉貴だって

顔が全然変わってねえんだ
身体だけ大人になってた