結局、書店にいる時間はたいしてなかったから…変装しても良かった

分厚い紙袋を抱えて撮影所に戻ってくると、さっそく紫音に見つかった

「親ばか発見!」

くっくっくと失笑しながら、紫音が腹をかかえて笑っていた

「んだよ!」

「勉強家」

ぼそっと紫音の婚約者・海堂彰吾が呟いた

「また来てるのかよ
仕事は平気なのか?」

「印鑑を押すだけ」

「ふん、お気楽な社長だな」

「不安…だから」

「紫音が? こいつのどこが不安になるんだよ
女とは思えねえくらい力があるし、言葉も悪いし
言いよる男がいると?」

「かる~く馬鹿にされてる気が…」

紫音が俺の腹に肘を入れてきた

「可愛いから」

「お前の眼にどう映ってるか知らねえけど、紫音は浮気なんかしねえだろ」

「狙われる」

「誰に? 身長の高い女を襲うか?」

俺の言葉に、海堂が紫音の頭を見つめた