最後まで読んでくれたファンの皆様
そしてスクープに驚いて本を手に持ってくれた皆様

この印税は全て、俺ら二人の結婚式資金にさせていただきますね!

本当は自叙伝を出す予定はありませんでした

本を出すということは永遠に俺の過去が生き続ける
それがすごく嫌だった

彼女の実名が世間に出たとき、会見を開くつもりでいました

事務所の方針は、すぐに自叙伝を出すという意向になっていました

でも俺は断りました

会見なら、一度俺の口から真実話せば、一時は騒がれても人々の記憶から
俺の過去は消えていく

自叙伝なら文字で俺の過去は残り続ける

忘れたい記憶が、忘れられない

だから本にするという話を断った

なぜそんな俺が本にしようかと思ったか

俺も不思議だった
警察署に彼女を迎えに行き、無事だとわかったとき
俺の何かが変化して気がした

はっきりと表現する方法を俺は知らない

マスコミを前にして
カメラのフラッシュを浴びて
マイクが俺の口に向いたら

俺の脳があれこれ考えるより先に、口が答えを出していた

『過去を本にすると』

本になり、俺の過去は残る

永遠に俺の過去であり続ける

でもそれって
文字になっていなくても変わらないんだよな

どんな人生を歩もうと、俺の過去は永遠に「過去」であり続けるんだ

前を向いて俺らしく生きていくために
俺は「過去」と向き合う作業は必要だった

だから今の俺は
「過去」を文字にして良かったと思っている



        一之瀬 桜嗣