「サインがなくったって怪我が治るんだよ」

「サインがあったほうが、より早く元気になるのよ」

「ならねーよ」

「なるの!」

「あー、五月蠅いうるさい
サインなら俺がしてやる」

俺は廊下を歩くと、居間に入った

莉緒がくすくすと笑って俺を出迎えてくれた

「ちゃんとサインはお二人分ありますから」

俺の後ろから入ってきたマネが、色紙を二枚テーブルに置いた

「うわあ、さすが桜嗣のマネだね!
ありがとう」

紫音が嬉しそうに色紙に飛びついた

「いらない」

彰吾が紫音が持っている色紙を取り上げる

「ちょっと、せっかく貰ったのに」

彰吾がゴミ箱に色紙を入れた

彰吾も嫉妬深いんだな

俺は思わず口を緩めて笑ってしまう

「ねえ、桜嗣
サインしてくれるって本当?」

莉緒が俺の腕に絡みついてくると、甘い声を出してくる

「あ…ああ」

俺の返事を聞いた莉緒がにっこりと笑うと、分厚い色紙の束を差し出した

「じゃあ、よろしくね」

「な、なんだよ!
これは…」

「桜嗣のサインが欲しいなぁって」

「こんなに?」

「うん」

「何に必要なんだよ」

「仕事」

莉緒は俺にマジックペンを握らせた