涙が 止まらない。
拭いても拭いても、流れ続ける。

玉葱切るのって、こんなに大変なんだ。

涙を流しながら桜香は玉葱を刻み続ける。

俊はベランダに出たっきり一度も部屋へは戻ってこない。

ずっと外を眺めながら煙草を吸っている。

なんなんだろう、この状況。

さっき会ったばかりの人の部屋で玉葱を刻みながら大泣きしている自分。

しかし、そんな状況がなぜか心地よい。

なんかおかしいな、私

そんなことを考えながら、鶏肉と刻んだ玉葱や人参を炒める。



中身を作るまでは何とか成功したはずだ。

問題は外側だ。

今まで何度かオムライスを作ったことがあるが、卵で中身を包むのがどうも苦手なのだ。いつも卵が破れてしまい、オムライスだか薄焼き卵ケチャップライスだかわからなくなってしまう。

でも今日は上手くいきそうな気がする。

誰かのために、こんなに頑張って料理をするのは初めてだから。