そんな感じの状態が続き映画が始まった。
涼香は一度だけこっちを向いて
「泣いてても気にしないでね」
と小声で言った。

映画の内容は第二次世界大戦中のドイツでユダヤ人の幼い兄弟が離ればなれになり、弟だけがドイツ兵に捕まってしまい、兄が弟を探して回るという内容だった。

必死に弟を探して回る兄。

映画に見いっていた僕はふと隣の涼香を見た。

涼香は大きな瞳一杯に涙を溜めて、スクリーンを見つめていた。
一粒、二粒と大きな雫が涼香の頬を流れる。

その日、普段は持ち歩いてないハンカチをたまたま持っていた僕は涼香にそれを渡した。
涼香はハンカチを受け取り、片手に持ったハンカチで涙を拭いながら、もう片方の手で僕の手を取り強く握った。

少し驚いたが、僕はその手を強く握り返した。