俊はベランダで煙草を吸っているようだ。

それを横目に桜香は冷蔵庫の中身を見ながら何を作るか考えていた。

卵…鶏肉…人参…玉葱…冷凍してあるご飯…

その材料で桜香が作れそうな料理は1つしかない。

オムライス

いや、オムライスさえ作れるかわからないが、やるしかない。

あの人がオムライスを食べる…
似合わない。
そう思った。がオムライスしか作れないのだから仕方ない。

桜香はとりあえず人参の皮を剥くことにした。



…いつも仕事から帰るとベランダで煙草を吸う。雨の日以外ほぼ毎日だ。
いつもの習慣だが、今日は少し状況が違う。振り替えると、キッチンでは女子高生が料理を作っている。

なんだこの状況…
少し微笑む。

普段なら人が家の中にいる時は落ち着かないし、あまり好きではない。

でも、今日は違う。
自分が上機嫌なのがわかる。

自分は援助交際の客。あの娘は売り手。

あの娘は金を貰う為に、今、この部屋で料理をしている。

そんなことわかってる。
あの娘は涼香でもない。
そんなこともわかってる。

でも、何故か上機嫌な自分。そんな自分は嫌いじゃない。

俺にもまだ、楽しいとかそういうのあったんだなぁ…