――7月7日。


七夕当日は
期待も虚しく、全てを洗い流すような雨だった。

心に出来た空洞に、冷たい雨が降り注ぐ。



「あーぁ。やっぱ雨降っちゃいましたねぇ。」

大きな溜め息を吐いて、おきちゃんは窓に視線を這わす。

彼女の手に握られたボールペンは、一向に動く気配はない。



「確か、去年も雨でしたよね?」

そう話を振られ、あたしは首を傾げながら「そうだったっけ?」と答えた。



「もぉ!これじゃ織り姫と彦星が会えないねー、って話したじゃないですか!」

「あ~…。そうだね、そんな話したかも。」

「全く!そうやってすぐ忘れちゃうんですからぁ!」


あはは、と笑い
あたしはミュージアムの商品整理に取り掛かる。


でも、暇を持て余したおきちゃんはまだ話足りないらしい。

仕事は山積みのようにあるのだが。



「そう言えば、昨日どうでした?」

「どうって何が?」


聞き返しながらも
仕入れたばかりの天体写真集を並べてゆく。

あたしはパラパラと中を拝借しつつ、おきちゃんの声に耳を澄ませた。



「またまたぁ!とぼけちゃって!天塚さんですよ、天塚さん!」

語尾にハートマークいっぱいの彼女の言葉に、あたしの手が止まる。