穏やか時間が、車内を包む。
何気ない会話の中に
彼からの愛が伝わって。
4年前から
ずっと一人で過ごして来た誕生日に、隣に誰かが居る。
そんな幸せを噛み締め
あたしは腕に花束の重みを感じながら、窓の外に視線を這わせた。
「雨、降りそうですね。」
相変わらず、空は星を映さない。
「明日は、晴れるといいな。」
そう言ったあたしに、彼から返って来た言葉は意外なものだった。
天塚さんは同じように窓から空を眺めて言う。
「うん。これじゃ星も見えないしね。やっぱり、夏より冬の星の方が綺麗だよ。」
「……え…?」
「冬は空気が澄んでるから星も綺麗に見えるし。」
――言葉を、失った。
目の前の景色が、ぐらぐらと歪み始める。
…目眩にも似た衝撃。
それは、あたしの思考回路を停止させて。
「織葉…?」
突然黙り込んだあたしに
どうかした?と、天塚さんが尋ねて来る。
我に返ったあたしは
彼の問い掛けに答えず、花束を持ったまま車から飛び出した。
「織葉!」
天塚さんの声を
背中に、聞きながら。