「よかった、会えて。」

開口一番、彼はそう言った。



車に乗り込んだあたしを迎えてくれたのは、今さっきまで吸ってたであろうタバコの香りと

優しい、天塚さんの笑顔。



あたしは溜まらずに、俯いたまま口を開く。



「…待ってて、くれたんですか?」

「……ダメだった?」

「い、いえ!そんな事…、」

「…ならよかった。最近忙しくて全然会えなかったから。」


嫌われたかと思った、と続けて言う彼に、あたしの心は締め付けられた。




すると、ふいに彼は車から降りトランクの方へ歩き出す。

瞬間、車内に掛かっていたラジオが外に漏れ、代わりにあたしを撫でた生温い風。



バン、とトランクを閉める音に気付き、はっと顔を上げると

「誕生日、おめでとう。」

目の前に差し出されたのは
両手で抱えきれない程の、花束だった。




――――え?



「…何で、」

驚き、言葉にならないでいるあたしに天塚さんは、ふっと顔を綻ばせて言った。



「さっき、沖南ちゃんから聞いたんだ。」