…彼方。
彼方はいつも、そうだったよね。
素っ気ないくせに
誰よりも周りに気を遣って
誰よりも、みんなの事を考えていて。
あたしは、そんな彼方の優しさにずっと気が付けなかった。
…だからなのかな。
こんなにも、会いたい。
そう、思うのは。
ねぇ、彼方は今何してるの?
会いたいよ。
彼方に、会いたいよ―――。
「…よいしょ、っと。」
一人きりのドームの掃除を終え、点検用紙にチェックをしてゆく。
今日も、彼方は来なかった。
ふう、と溜め息を吐き
腕時計に視線を落とせば、時間はちょうど8時過ぎ。
いつも通り
仕事をこなしたあたしは、ドームに鍵を掛けカウンターへ向かう。
そして、レジを締めようとしたその時。
「あ、」
ドサ、と音を立て
あたしの肘にぶつかった段ボールが、床一面に中身を散ばせた。