例えば、陽平の言葉が嘘だったとしても。


陽平がくれた言葉は、確かにあたしを深い谷底から救い出してくれた。



もう、それで充分だと思った。

彼は自分のした事
あたしへの罪悪感で押し潰されそうだったんだと思う。

あたしが苦しみ、悲しんできた分
陽平もずっと辛い4年間だったんだ。



向き合う勇気が持てなくて

あたしたちはずっと癒えない傷を隠して。



でも、二人が過ごしてきた時間は無駄じゃなかった。

愛した人に、ちゃんと愛されていた。



その事実だけで
もう、充分だった。





「あ、そう言えば。」


ついさっき、何事もなかったかのように戻って来たおきちゃんは思い出したように口を開く。

ちょっと前
あたしに失礼極まりない事を言ってきたくせに、普通に話し掛けてくる所が彼女らしいというか何と言うか。


「今度は何ー?」

あたしは仕事を進める手を休めず、おきちゃんに聞き返した。


すると、ガサガサと何かを漁る音が聞こえ
視線をカウンターから移すと

「また来てましたよ?」

と、おきちゃんが手渡して来たのは


懐かしい、あのstar letterだった。