唯一の救いは
彼方がプラネタリウムに来なくなった事。
こうゆう時は
おそらく、研究室にこもっているんだと思う。
今までも何週間も来ない事は度々あったし、「何してたの?」と聞けば、決まって「研究だよ。」と返って来た。
きっと今頃、誰よりも真剣な顔で星を追い掛けてるのだろう。
一人きりのドームで
キスされた時の座席に視線を向けた。
思い出すだけで
胸がモヤモヤしてやり切れない気持ちが襲う。
振り切るように立ち上がれば、余計にあの日の出来事が鮮明に脳裏を過ぎった。
…知らないフリをすればいいのかもしれない。
何事もなかったかのように振る舞えば、また前みたく話せるのかもしれない。
だけど、それじゃ胸につっかえたこの気持ちはどうしたらいいの?
どんな顔で天塚さんに会えば?
何度も何度も同じ事を考えて
だけど、答えは見つからなくて。
吐き出した溜め息は
あたしの心を更に複雑にしてゆく。
―――と、その時。
「織葉さん!」