空っぽになった客席に
力が抜けたように腰を降ろした。
そのまま背もたれに寄り掛かり、顔を天井へ向け目を閉じる。
瞼の裏に、満天の星空が見えた。
…理由はわかってる。
それこそ、考えるまでもない話だ。
今も確かに残る、彼方の温もり。
触れた唇は
彼の温もりをちゃんと覚えていた。
夢だと…
あれは気のせいだったと
誰かに言って欲しかった。
そうすればあたしはその言葉を信じるだろう。
でも、誰にも言えない。
おきちゃんにも
天塚さんにも
ましてや、彼方にも。
どうしてキスをしたのか、なんて聞ける訳なかった。
だからこそ
どうしたらいいのかわからなくて。
天塚さんに会う気にもなれない。
あたしは、どうしたらいいの?
彼方は何で
あたしにあんな事したの?
わからない。
わかんないよ…。