誰かを想う事、想われる事がこんなにも甘く

そして幸せな事だったと
あたしは昨日久々に肌で感じていた。


天塚さんから与えられる愛は
優しく、あたしを包み込んでくれる。


まだ出会ったばっかりだし
知らない事もたくさんあるけど

暇を見つけては会いに来てくれる彼は、陽平に恋をしていた時とは違う安心感をあたしに与えてくれた。


愛されてる、そう感じる事が出来る。



陽平を好きだった時のあたしは
愛して欲しい、そうずっと願っていた。

だけど、天塚さんはあたしを大切に想ってくれてるって伝わって来る。


それだけで
臆病だったあたしは、ようやく過去を捨てられたんだ。



―――やっと、踏み出す事が出来たの。








…………


カチ、カチっと機械を動かす音があたしの耳へ戻って来る。


でも目を開ける事が億劫で
あたしはもうしばらく瞼を閉じてる事にした。


瞼の向こう側では
相変わらず昼が夜へ、夜が昼へと目まぐるしく変わってゆく。


と、その時。




ゆっくりと
だけど確実に


彼方がこっちへ向かって来る足音が聞こえた。