そんな寂しさと
醜い嫉妬心でいっぱいな毎日を送っていた、ある日の事。



「お疲れさま。」

偶然にも、エレベーターの中で梨絵さんに会ってしまったあたし。



「…お疲れさまです。」

社交辞令と言わんばかりに
ペコリ、と小さく頭を下げてあたしは隅に移動する。

このエレベーターは
従業員専用で、つまるところあたしは梨絵さんと二人きりになってしまったのだ。



…最悪。
朝一番で会っちゃうなんて。



心の中でそっと呟き
じれったく上がってゆく数字を目で追ってると

「そうだ。笹原さんも来てくれるよね?送別会。」

唐突に話を振られ、あたしは梨絵さんへ視線を向けた。



おそらく、顔に出ていたんだろう。

梨絵さんはあたしを見て
「…何も聞いてない?」と、目を丸くする。


尋ねられ、一度だけ首を縦に振ると
梨絵さんは柔らかく顔を綻ばせて言った。

幸せに満ちた、笑顔で。



「あたし、結婚するの。」

「え?」


……結婚?


驚いたのも束の間。
次に梨絵さんの口から出た名前に、あたしの心臓は一瞬にして貫かれたんだ。






「長岡くんと、ね。」