異変に気が付いたのは
陽平と付き合い始めて、もうすぐ2年経つ頃の事だった。



日頃から、陽平は忙しい人で
お店のほとんどの在庫管理や食材に至るまで任されていて

二人で会う時間は全くない、と言っていい程。


それでも、あたしは毎日欠かさず連絡をしてくれる陽平を信じていたし
お店で会えるんだから、と寂しさを押し殺して理解のある女を演じていた。



その日は、ちょうどゴールデンウィークに差し掛かった日でお店はバタバタしていて。


だけど、2年も経てば
あたしはすっかり仕事に馴染み、そんな忙しさも難なくこなせるようになっていた。




「お疲れさま~!」

「あっ、梨絵さんお疲れさまです!」


カツカツとヒールを鳴らし
細見のパンツスーツを着こなした彼女は、原田 梨絵(ハラダ リエ)


このホテルの営業本部に所属し
企業、官公庁、学校などからホテルの宴会場利用を中心とした相談を受け、アレンジを行う。

所謂、エリート。



梨絵さんはこのレストランを受け持ってるらしく、あたしがこのお店に就く前からみんなと顔馴染みだった。



「長岡くん、お疲れさま。」

「お疲れさまです。」




もちろん、陽平とも。