それから、あたしの目に映る世界は一変して色を変えた。
陽平に触れる度
あたしの心は揺れて
一緒に過ごす時間が増える程
あたしは陽平でいっぱいになった。
こんな恋は、もう二度と出来ないと思ってたくらいに。
そんなあたしに
ある日、陽平は言った。
『織葉、俺達の事は誰にも言わないで。』
今になって思えば
何故あの時、気が付けなかったのだろう。
陽平があたしに向ける愛が、偽りだったと。
だけど、その時のあたしは目の前の陽平が全てで、陽平の言葉を疑う事なんて1ミリも考えてなかった。
陽平はオーナーからも厚い信頼を受けていたし
従業員にも、そしてお客さんからもとても人気が高かったのだ。
だから、あたしとの関係を公に出来ないのは当たり前なんだって思ってた。
むしろ、そんな人が恋人だと思うと優越感すら感じて
誇りにすら思ってた。
それだけ、あたしは周りが見えてなかったんだと思う。
叩けば割れる、そんな脆い恋愛にしがみついて
与えてくれる言葉全部が、幻だったなんて。
頭の隅ですら、考えた事なかった。