陽平は、あたしより一年早くここに勤めていた。
最初はあたしも先輩として彼を慕っていて。
それがいつから“恋”に変わったのか…自分でもよく覚えてない。
だけど陽平は、入社したてのあたしをすごく気にかけてくれていた。
だから、二人の距離が縮まったのはごく自然の成り行きだったと思う。
働き始めて2ヶ月経ったある日、陽平に誘われ二人で初めて食事に行った。
3ヶ月も過ぎれば、陽平はあたしを自分の部屋に連れて行ってくれた。
そして、4ヶ月目。
ちょうど梅雨が明けた夏の入口に、あたしは陽平に言われたんだ。
『俺と一緒に居てくれる?』
――夢かと思った。
本当に、夢なんじゃないかと自分を疑った。
あたしは陽平に会う度に彼に惹かれていたし、ずっと彼が好きだったから。
この想いが、彼と通じ合えるなんて思ってなかったんだ。
だからこそ
それはどんな着飾った言葉よりもあたしの胸に響いて。
初めて二人の唇が重なった時、あたしは頬を伝う涙を止める事が出来なかった。