「ごめん……、」

尋ねられた彼は、透明の傘を手に小さく俯いた。


一方のあたしは
彼から視線を外さずに、言葉を投げる。



「帰ってって言ったでしょ?」

「………、」

「今更何のつもり?こんな所まで押し掛けて来て。」

「……織葉、俺…、」

「本当に迷惑なんだけど。だからもう来ないで!」



彼に喋る隙間を与えず
矢継ぎ早に冷たい言葉を吐き出すと、あたしは来た道を戻り始めた。



そして、やっぱり後悔する。

歩いて帰ればよかった。
バスに乗ろう、なんて横着しようとするからこんな事になるんだ。


心の中で自分を責めながら
ぎゅっと唇を噛み締めた。

溢れ出そうな理解し難い感情を殺す。


それが悔しさなのか、彼への怒りなのか

それとも未練、なのか。



あたしにはわからなくて。




ただ零れ落ちそうな気持ちに蓋をして、歩き出したあたしに映ったのは。





「……彼方、」




ブルーの傘を差し
あたしの後ろにいる彼を見つめた彼方だった。