一日の仕事を終え
外に出ると、バケツをひっくり返したようなどしゃ降りだった。
ただでさえ湿気の混じった雨水に、何とも言い難い生温い風。
絡みつくようにまとわりつくジメッとした夜道に、淡色系の傘を差す。
歩く度に跳ねて足元を濡らす雨に、心底うんざりした。
…これだから、雨は嫌いだ。
いつもなら自転車で来られるのに
雨が降れば歩きで帰らなければならないし
洗濯物は干せないし。
それに、星だって見えやしない。
ごく稀に雨が好き、って人もいるだろうけれどあたしは苦手。
星が見えない空は
ただあたしを憂鬱にさせるだけだ。
「はぁ。」
思わず出た溜め息に
傘から落ちる雨粒があたしの肩を濡らす。
…今日はバスで帰っちゃおうかな。
と、横着するべく
いつもとは逆方向に歩き始めた時。
「…織葉!」
ピチャン、と鳴った水たまりが
映し出した世界を歪ませた。