「…へ?」
予想もしていなかったおきちゃんの言葉に、自分でも間抜けな声が出たと思った。
そんなあたしの間抜け声には触れず、おきちゃんは満面の笑みで話し出す。
「だからぁ、彼方さんですって!」
「そ、そう?」
「そうですよーっ!織葉さん仲いいのに、全然思わないんですか?」
「……考えた事、なかった…かな。」
あたしは言葉を濁しながら
彼方が持って来たチェック用紙に視線を落とした。
でも、おきちゃんはまだ話し足りないのか陽気に喋り始める。
「彼方さんって、彼女とかいないんですかね!?」
「さぁ…。聞いた事ないから、」
「そうですよねー。何だか彼方さんって謎めいてるって言うかぁ。」
そこがまたいいんですけど!とか言いながら
それからもおきちゃんはしつこく彼方の事をあたしに訊いて来た。
だけどあたしが答えてあげられるような事なんて何もない。
いや、ないというよりも
あたしは何も知らないのだ。
これだけ何年も星を通じて来たのに、あたしは彼方の事を何も知らなかった。
今まで、そんな事考えた事もなかったから。
それが普通だと思ってたから。
……なのに、何でだろう。
途端に彼方と距離が出来たように感じた。