そう思っていたのに
彼方から掛けられた言葉は、意外なモノだった。
「お前、マジで大丈夫か?」
「…え?」
「あんま、顔色よくねーよ?」
どっか具合悪いのか?
そう顔を覗き込んだ彼方の表情は、本当に心配をしてくれているのだと伝わって来た。
その優しさが、今のあたしには痛くて。
ツン、と鼻を刺激され
あたしは慌てて彼方から離れた。
「何でもない!何かちょっと疲れてるのかも!」
「…本当かよ?」
「うん、平気へーき!」
「……まぁ、オリがそう言うならいいけど。」
無理に明るく振る舞っているって事
彼方は気付いてるのか、気付いていないのかはわからないけど
「とりあえず、チェックは怠んなよ。」
トン、と用紙を叩いて
そのままドーム内へと向かっていってしまった。
あたしはその背中を眺めながら、人知れず胸を撫で下ろす。
そして、完全に彼方の姿が見えなくなった時
おもむろにおきちゃんが呟いた。
「彼方さんって素敵ですよねぇ。」