雨が降ったら
彦星と織姫は会えない。


一年のうちのたった一日…
7月7日の夜を待ちわびて、また一年会えない日々を過ごすんだと

あたしはずっと思ってた。



…だけど違ったんだ。



会えなくて、でも会いたくて。


そんな二人を
手助けしてくれる存在が星にもある。


ただの伝説かもしれない。

作り話かもしれない。



でも、彼方の話を聞いて
あたしの心は温かくなった。



それだけで、充分だと思った。

それだけで
また、あたしは星に近付けたような気がしたから。



「…ありがと。」

「んー?」

「聞かせて、くれて。」

「…おう。」


不器用な彼方の優しさが、何だかくすぐったくて。



「帰ろーぜ。」



いつもなら、彼方から教えられるのは悔しい…なんて思ってたけど

今日は、素直に“ありがとう”って伝えたくなったんだ。