そんな彼方の足音を聞きながら、あたしはくすんだ空を見つめる。



「オリ?」

すると、一向に歩き出さないあたしに、彼方が足を止めた。


濡れた木の葉から
ポタリと雫がこぼれ落ち、水溜りが跳ねる。

遠くの道路から車が過ぎる音が響く。




あたしは視線を夜空に預けたまま呟いた。


「…今年は、会えるといいね。」

「え?」

「彦星と織姫。ほら、去年は雨だったでしょ?」

「あぁ、そう言えばそうだったな。」


その答えを聞いて
ようやく歩き出すと、彼方が言った。



「だけど、雨が降っても会える。」

「…え?」


ポカン、とするあたしに

「知らなかったのか?」

と、彼方。


「知らない!本当なの?」

「まぁ、伝説だし。本当かは知らねーけど。」

「教えて!本当に雨が降っても会えるの!?」


まるで子供のようにはしゃぐあたしに、彼方は仕方ねぇなぁ、と眉をひそめて教えてくれた。




―――それは、七夕の伝説。