「んーっ!」

彼方の上映会を終え
館内の鍵を掛けて外に出ると、昼間降っていた雨は止んでいた。


伸ばした体で、空を見上げれば少ない星が輝いている。

雨の匂いを嗅ぎながら、あたしは彼方の隣に並んだ。


彼方は大口を開けてあくびをしてる。


それを見て、あたしは尋ねた。


「研究、忙しいの?」

「んー、まぁ。」

「どうせまた寝てないんでしょ。そのうち倒れるよ?」

「倒れるまでやったら、いい研究結果が出るだろ。」

「…んとに、天体バカだよね。」

「そんな褒めんな。」

「褒めてないっつーの!」


バシっと彼方の背中を叩く。


彼方は「いってぇ!」とか言いながらも、笑っていた。


その横顔を眺めながら、濡れた地面を踏みしめた。



そして、再び夜空を見上げると思わず溜め息が漏れる。


「星、見えないね。」


そう呟いたあたしに
彼方も空を仰ぎ「そうだな。」と答えた。



「七夕、晴れるかな。」

「そうゆう事は気象庁に聞け。」

「んもう!そうゆう現実的な事言ってるんじゃないってば!」


夢がないなぁ、と口を尖らせるあたしに
彼方は「悪かったな。」と吐き捨てて歩き出す。