彼方はここの従業員ではない。
ただ、足繁く通ってるうちに
館長と仲良くなり、こうして投影機の全てを任されるようになったのだ。
彼方も、それを嫌がらずに
むしろ楽しんでやっていると思う。
「ここのプラネタリウムで輝く星は、幸せだよな。」
出会ったばかりの頃
彼方はプラネタリウムを見上げ、そう小さく呟いた。
「どうして?」と訊いたあたしに
彼方は瞳に星を浮かべながら、その光を見つめて言った。
「みんなに、愛されてるから」と。
彼方から視線を星に向ければ
都会じゃ見れない程の光の大群に、心が奪われた。
あの時から
彼方はずっと星に夢中だった。
誰の目にも映らない星が、彼方だけには見えてるように。
だから、あたしは彼方が口にする星の話が好きになった。
負けないように、って
たくさん星の事を勉強して、吸収して。
だけど、彼方が語る星の軌跡は
どんな凄腕の解説員よりも、優しい語り口の館長よりも
あたしの心に染みる。
彼方の星への情熱が
いつも、あたしの心を揺さぶるのだ。