「まー、言われてみれば確かに似てるな。」
「でしょ!?やっぱ似てるよね!」
この『あ』っていう字とか!
と、興奮した様子で話すあたしに
彼方はハガキから天体の本へと視線を移した。
今日は太陽について勉強してるみたいだ。
客の出払った後にドーム内で
シートに座り、彼方はこうしてここでいつも難しそうな本を
難しい顔して読んでる。
家よりも、研究所よりも
ここで読むのが一番落ち着くのだそう。
その気持ちは、何となくわかる気がする。
彼方は投影機の点検、及び修理をする替わりに
営業時間後のドームの使用を、館長から許されているのだ。
それに便乗して、ここでゆっくりするのが
あたしの仕事終わりの日課でもあった。
「ねー、彼方?」
「あー?」
「あれ、見たいな。」
「…あれ?」
「うん、七夕の。」
そう言ったあたしに
彼方は「…ったく。」とか言いながらも、本を閉じて立ち上がる。
何だかんだ言って、彼方はこうしてあたしだけの上映会をしてくれるのだ。
あたしは、そんな彼方が操る星を見てるのが好きだった。
特に、彼方の語る七夕伝説が一番のお気に入り。