私は、今まで松浦さんには迷惑ばかりかけてきた。
12才の時にavexのオーディションを受けて合格し、13才で寮に入るように言われて、レッスンを受けさせてもらってきた。
今だから言えるけど、それまでにいろんなチャンスも与えてもらってた。
デビューする話…
ニューヨークに行く話…
それなのに、中学で荒れてた私は、せっかくのチャンスを全部壊してきた。
――――――――――――――
とあるデビューに向けた
面接で――。
『髪の毛の色、学校でなにも言われないの?』
私の金髪に近い明るい髪の毛を見てそう聞く、avexの幹部の方。
『…言われます』
『じゃあ、明日までに黒に染めてきて』
『………』
そう言われても私は、髪色を変えなかった。
この日、一緒に面接した私以外のレッスン生は
その後みんなデビューして、今大人気のアーティストになっている。
私だけが、デビューできなかった。
今考えると、ただ突っ張ってただけ…
つまらない意地で、せっかくの貴重なチャンスを潰していた。
本当にこの時の私は、子供で、どうしようもなかった…。
そんなことがありながらも、今までずっと見捨てず、クビにもせず、私に期待し続けてくれた松浦さん。
なのに私は今度は恋愛に夢中になって、また松浦さんを裏切っていた…。
アーティスト志望のたくさんの人達が、受けたくても受けられないレッスンを受けさせてもらったり、恵まれた環境を与えてもらっていたのに…。
もうなんでだろ。
こんな大事なことを、今更反省したってもう遅いのに…
自分がピンチにならなきゃ
気付かないなんて…。
私は、クビか…と
ちょっぴり覚悟をして
社長室に向かった。