水を打ったような静けさの中、戦国武将のようないかつい顔をした校長の低い声が、入学式が行われている体育館では朗々と響いていた。

視線を校長からゆっくりと離し、端から端まで見渡す。

300名余りの


人、人、人…



何だか自分以外の新入生はみな、ものすごく大人に見えて。

自分がここにいることが場違いなように感じ、これからの高校生活を思うと、憂鬱になる。


この人見知りな性格も、いい加減直さなければ。

そう、心の中で決心し、ひとつ、ため息をついた。


その時。


「ねえ、あれ、K中の七澤君だよね?」

不意に、隣に座っていた女生徒にそう声をかけられ、私は思わず体をびくつかせてしまった。


騒がしい心臓を押さえつつ、返事をする。


「…な、七澤…?」

…誰だ?

女生徒は、そう首を傾げた私の顔を、信じられないものを見るような目で見て来てそのまま暫く固まると、ああ、このあたりの人じゃないのね?と呟くように言って、続けて口を開いた。


「七澤総司君、眉目秀麗、スポーツ万能、性格もすっごく優しくて誰にでも平等で、まさに王子様よ。中学では生徒会長をやっていて、ファンクラブがいくつもある人なの。」

そう言って、檀上に上がった一人の男子生徒をうっとりと眺める。
私もそこに視線を移した。

遠いせいでよくは見えなかったが、すらりとした長身で、髪が少し栗色っぽい色であることがわかった。

隣から、溜息と共に女生徒の呟きが聞こえた。


「ずうっと、憧れだったの。…噂は聞いてたけど、まさか本当に同じ高校だなんて」