まさか、こんな綺麗な人に紹介してもらうなんて信じられない。
「座って。」
「はい、失礼します。」
田中は野田の隣に座った。はじめての接客に田中は緊張していた。
「お酒、注いでくれないの?」
「すみません。」
田中は慌てて氷を入れお酒を入れた。
「薄いわね。」
野田の評価は辛口だった。
「でも、私的に好みだから許す。この子のお祝いでドンペリでも頼むわ。お願い。」
「ありがとうございます。よかったな田中。」
「はい。ありがとうございます。」
辛口からの逆転。お酒の中でも高いクラスに入るドンペリを頼んでくれた。
斎藤さんが近づいて田中の肩をポンと叩き親指を立てた。
「上出来。」
一言だけどなんだかうれしい。最初はやり甲斐がない仕事だと思ったけど今は選んでよかったと思う。前の仕事にはない達成感と刺激がある。なんとか長続きしそうな気がしてきた。
「みんな、今日はご苦労様。今日も大反響で。これ、給料ね。」
「給料?」
「言ってなかったかな?給料は日払いなんだ。」
田中は分厚い封筒を受け取った。中を見ると一日働いただけなのに15万入っていた。少ないのか多いのかはわからないけど一日で前の仕事の給料分が貰えるとは驚きだ。
仕事は夜のため朝はプライベート時間。ほとんどの人は寝たりして休む時間。だが、田中は違っていた。貰ったばかりの給料で買い物に出掛けた。何を買うのか決まっていないが使わないと気が済まないでいた。
「何を買うかな。やっぱり、服かな。ホストだしな。かっこいいやつじゃないと。」
独り言も弾む。
「田中君?」
服を選んでいる時、どこか懐かしい声が聞こえた。