「そっかー!じゃぁ、今日も暑くなりそうだなー」

「…うん」

会話が止まってしまった

こんな間、昨日まではなんてことなかったのに

私はどうしていいかわからず

俯いてばかりいた

「奈緒…?」

「え!?えーっと…何!」

樹の顔を見続けることができず私の目は忙しなく動いた

「…ううん。何でもない」

何かを話すのも、何でもないと取り消されるのも

もうどちらの空気にも耐えられそうにない

息の吸い方すら私はぎこちなくなって

一刻も早くここを出ることだけを考えた

「あ…えーっと…じゃぁ、次の人、の、家に行く…ね!!!」

私がドアの方に歩き出すのと同時に樹が私の腕をつかんだ

「俺、やだよ」

この一言で私の頭はいっぱいになった

やだ?

何がやだ?

……

私が…行くのがやた…?

胸が痛んだ

「こんなん嫌だ。奈緒、避けないで。普通でいてよ…」

顔から汗が吹き出すのがわかった

なんて自分はバカなのだろう

なんて自分は自惚れているのだろう

樹は普通にしてくれているのだから、そんな考えを起こすわけないのに

私は恥ずかしくて樹に背を向けたまま答えた