チャイムを鳴らす指が少し震えた

震えを止めるように私は、勢いよくインターフォンを押した

「鍵が開いているから入って来てー!」

私と確認をとらずに樹のお母さんが私を中に呼んだ

「はっはい!」

私は一つ息をつき、靴を脱いでゆっくり二階へ上がる

樹の部屋のドアに手をかけた後、また大きく息を吸った

いつも通り

いつも通り

わからないいつもを思い出す

きっとドアを開けた途端におっきな声で樹を呼び、布団を剥ぐ

きっとそれでいいんだ!

いつもを確認した後、私は1回咳払いをして

ドアを開けた

「い…つき!!!」

「んー」

「…朝だよ」

こんな小さな声では起きるわけがないわかっていたけど、それ以上が出せなかった

掛けてある時計を見上げるといつもの時間より5分だけ早い

もう少し寝かせてあげよう

もう少し私も猶予をもらおう

私は樹の勉強机のいすに腰を下ろした

机は教科書が山積みになっていて、勉強なんてしている気配もなかった

でも、樹は勉強なんて最低限できればいい

だって樹には野球がずば抜けて出来るのだから

世界は一つのものが何か秀でていれば、食べていけるのだから