自分だけ、普通に戻った樹が続ける

「ちゃんと、俺のこと見て!部員としてじゃなくてさ、なんて言うのかな?
客観的にっていうのかな?
野球部としてではなくて。いや、野球部のエースっていう肩書きはカッコいいから、そこは見てほしいけど!」

ホントに何かつっかえていたものがとれたように、笑顔でベラベラと話し出した

「あと今、振られたら、明日からのピッチングにものすごい影響が出そうだからさ!
期待させてくださいよ!カッコいい所見せるために頑張りますので!!」

樹が冗談か冗談じゃないかよくわからないトーンで話した

その樹がにっこりとほほえんだ後

「よっし!スッキリしたし帰りますか!」

といいながら、立ち上がり、私に手を差し出した

私はそれで立ち上がった後、どうやって帰ったのかわからない

覚えているのは樹のゴツゴツした手と、オヤスミという声だけ

気付いたときは私はベッドの上で

朝のまぶしい光と目覚ましのけたたましい音が鳴り響いていた

また夢かと思ったが日付は完璧に次の日を刻んでいて、あれはどう考えても昨日の出来事で、現実だった

そしてまた昨日のように胸が苦しく締め付けられた