私の周りを大きな輪を作りながら部員が取り囲んだ

一斉に私に詰め寄り、一瞬で私は、もみくちゃにされた

どうにもならない状況をまとめたのはやはり、キャプテンだった

「ストーップ!」

大声で言うとみんな素直に動きを止めた

「整列!」

わらわらと動きだし一列に並ぶ

野球部で学ぶものは技術だけではない

みんなそれがしっかり学べているのだと、あっという間に整列した彼らを見ると実感する

一番先頭に立っている、将太と目が合う

「彼女待たせてんだよ。早く。」

言い終わるか終わらないうちに将太は頭を抱えてしゃがんだ

後ろにいた、部員に頭を殴られたらしい

将太に彼女が出来たのがよほど悔しいのだろう

ほとんどの三年生が、いい気味とばかりに爆笑した

私はその間に鞄からミサンガとレギュラー用のお守りを入れた大きな空き缶を取り

しゃがみ込んだ将太を立たせながら、それらを渡した

「明日から、頑張ってね!」

「おぅ…サンキュー…痛…あー。背番号まで入ってる」

ユニフォーム型のお守りを眺めながら将太がいった

「うん。あー!あんまりちゃんと見ちゃダメ!ヘタなのバレちゃう!!」