「応援よろしくお願いします!」

「っしゃす!!!」

さわやかな声とともに、高校球児らしい坊主頭が一斉に頭を下げた

拍手が沸き起こる

頭を上げた野球部員の制服はきちっとしたまま。私は大満足で拍手に加わった

またどこかで女の子達が樹の名前を呼んだ

樹はにっこり笑いながら、壇上を下りていった

そして、またただの暑苦しい単一的な体育館へと変わっていった

「奈緒」

後ろを振り向くと野球部員が自分達のクラスの列に戻されたらしく、将太が一番後ろでしゃがんでいた

私が将太に気づくと将太は口パクで「こっちに来い」といいながら、手招きをしていた

私は、先生達の隙をみてすばやく、一番後ろに移動した

将太の隣に座り直すと将太が耳打ちをした

「なんで彼女いるのわかったの?」

「毎週水曜日、最近、先に一人で帰っちゃうじゃない?あれ?って思ってたんだけど。それで、かまかけてみた!」

「マジかよー」

小声を忘れて将太が落胆の声を上げた

私は小声で続ける

「バレちゃダメだったの?」

「いや?ただ、自分の口から自慢したかった。」

少しでも、まずいことをしたと思った自分が馬鹿だった