生徒達が壇上に上り、下りをし、また他の部活の生徒が上る

めまぐるしく入れ替わる運動部の生徒達の下で、ただそれを見る方が飽きてきた頃

とうとう野球部の番がやってきた

進行役の生活指導の先生が野球部と言うと

一瞬にして、体育館の空気が変わった

誰かがキャーと叫ぶと、スイッチが入ったように、すごい数の女子生徒が騒ぎだした

「樹くーん!」

「頑張ってねー!」

「こっち向いてー!」

あちらこちらから、樹を呼ぶ声がした

樹は笑顔で手を小さく振った

一段と大きくなる叫び声

先生達ですら収拾がつかない状況

真美は隣で不機嫌そうに耳をふさぎながら、ため息をついた

私はただただ壇上を笑顔で見つめた

キャプテンがぎこちない足取りで一歩前に出る

私も緊張しながら、キャプテンを見つめた

状況が少し落ち着いたところでキャプテンは話始めた

「明日から、夢の舞台、甲子園へ。その一つの切符をかけての地方大会が始まります。僕を含めてここにいる三年生にとっては、引退もかかっている大切な大会です。今までの練習の成果を十分に発揮し、悔いの残らないよう精一杯頑張ってきます!」