人でごった返す体育館で私は野球部を探した

「奈緒!」

樹の声がした

その中で樹を見つけだすと手招きをしていた

「ねぇ!変でない?俺!」

ブレザーの裾をピッピッとのばすと樹は少し照れながら姿勢を正した

「うーん。ワイシャツのボタンは最後まで留めなきゃ!あとネクタイもしっかりしめること!腰パンもよくないよ!ベルトも指定のじゃなきゃダメなんだけどな。見えないから、まぁいいよ。あと、上履き!かかと踏んだままじゃ絶対ダメ!」

私が指摘すると、樹は急いで折れてしまった上履きのかかとの部分を直し、つま先でトントンと地面を叩いて履き直した

「はい!少し上向いて!」

「へ?」

上履きだけで、もたついている樹にしびれを切らした私は樹のワイシャツのボタンを閉めようと樹に近づいた

一度は素直に上を向いた樹が一歩下がりながら私を見た

「な、何!?」

「え?樹遅いからボタン閉めようと思って。」

樹は手と顔を大きく振った

「いいよ!自分でやるよ!」

「じゃぁ、腰パン直してあげましょか?」

「バカ!何言ってんだお前!!!」

赤くなる樹の声が体育館中に響き渡った