しばらく、樹に引っ張られながら歩いた

樹は子供をあやすように私に声をかけながら進んだ

「はい。靴換えて。」

顔を隠していたタオルを少しズラすと私の靴が見えた

樹が出してくれたらしい

樹はしゃがみながら、私の顔を見上げた

私と目が合うと樹はにっこりと笑った

靴をはきかえると樹は、私の上履きをげた箱にしまってくれた

「山部!」

妙に聞き覚えのあるセリフだった

彼女だとすぐにわかった

「ミタニ。どした?」

樹が彼女の声の方に歩き出す

私は見えないようにげた箱の方を向いた

「今日は暇?」

「いや、今日も無理だ。」

ミタニさんはきっと私を睨んでいるのだろう。少しの沈黙の後、とげとげしい声で言い放った

「またあの子?」

「え?いや、まぁ。」

少し驚きながら樹が返した

「入部してから、部活、皆勤賞だったマネジがさ。今日初欠席してさ。しかも無断で。部活中、大騒ぎ!探し出して見つけたら、大泣きしてるし、これは理由聞くしかないじゃん?」

理由を聞くという言葉にミタニさんは急に焦りだした

「そっか!あ!じゃぁ、また明日!」

ミタニさんは足早にこの場を去った