樹と朝、話しすぎたせいで忙しすぎた朝練を終えて私たちはまた授業を受ける

朝から古文は正直きつい

古文と同じ雰囲気のゆったりとしたユルい先生がゆっくりと優しい声で授業を進める

眠くない人でも寝てしまうすごい授業だ

なのに今日の私は起きていた

朝練のおかげでいい具合に疲れているはずなのに眠くなかった

それどころか胸が高鳴って、今日1日眠れない気すらした

今日の夢が忘れられない

本当に最高の夢だった

多分、ベンチの中は、甲子園のベンチに入ったことはないので

地元の球場と私の勝手な想像で作り出されたものだが

樹が立っていたところは確かに甲子園だった

テレビで見て、恋い焦がれ続けた甲子園球場だった

去年アルプススタンドで見つめたマウンドだった

あの暑い日差し

特有の浜風

大きな歓声

その中に樹がいて、将太がいて、みんながいた

そして私もいた

今日の夢を思い出しにやけているとふと先生と目が合っているのに気づいた

先生が完全に変な目で私を見ている

私はすぐ目をそらしノートを取る振りをした

先生はやっと授業を再開し、将太はいびきをかきながら隣で眠っていた