さっきのコーヒーがまだ口の中に留まっている

口の中は何とも言えないイヤな感じで満たされていた

しかしコーヒーの効果は抜群だ

先ほどの眠気が嘘のようだった

二回ほど腕を回し肩の骨を鳴らすと

私は作業を再開した

チクリチクリとユニフォームを縫っていく

半分ぐらいを縫ったとき、鞄から妙な音が鳴っているのに気づいた

携帯がマナーモードに設定してあるからそのバイブ音だとわかった

作業を中断して、携帯を鞄からだし画面を見ると

樹と表示されていた

「はい?」

私は電話に出た

「やっと出た」

樹の声が聞こえた

「どうしたの?こんな遅くに」

「どうしたの?じゃねぇよ!今まで何回もメールしたのに、返事こないし電話も出ないから!!!」

樹が少し怒っていた

私はとりあえず謝った

「携帯ずっとカバンの中で気づかなかったの。ごめんなさい」

「無事ならいいんだよ」

少しだけ樹の声が優しくなった

「それでなんでそんなに連絡してきたの?」

私は聞いた

「いや、いつも将太と帰るけど今日は一人だからちゃんと家に着いたかなー。って思って」

ハッキリとしゃべらずに樹が答えた