キャッチボールを終えるとノックが始まった

樹と将太はみんなとは違うところで投げ込みを始めた

私は監督の後ろに回りボールを渡す

ボールを出す方向に声をかけ監督がフワリとボールを投げ金属バットでそれを叩いた

みんながそれを処理しファーストに投げる

ナイスボールと言う声が飛び交い

そしてまた監督が声を出す

これが何十分も続くのだ

ボールを渡すだけの動作で私が汗ばんだ頃

ラストの声がかかり

少しの休憩が始まった

みんなが一斉にタンクの前に集まった

「あちー」

樹がタンクより少し離れたところに座り込んだ

私はコップに水を汲み、樹に駆け寄った

「はい、お疲れ様」

コップと一緒に小さなタッパーも差し出した

「何それ」

不思議そうに樹が眺めた

「お塩だよ」

私はタッパーを開け再び樹に差し出す

「少し食べて。汗で出した分、取り戻さなきゃ」

「なるほど」

樹は納得したように言うと

塩を少しつまみ水の中に入れ、水を飲み干した

「もっとお水いる?」

「いや、大丈夫」

そう言うとコップを私に返し、ありがとうと笑った