樹は将太の服の袖をつかんで嬉しそうに貸してと叫ぶように言った

将太はニコリと笑うと教室に入り数十秒もしないうちに教科書を持って、戻ってきた

「教科書は全部学校に置いてあるからな!」

自慢できないようなことを自慢げに言う将太

それを神様の言葉のように聞く樹

なんだか、笑えた

笑っているうちに、本鈴がなり始めた

樹はあとで返しにくる!と言って廊下を走っていった

私たちも席に着いた

先生が教室に入り、日直が号令をかけた

ガタガタという騒音とともに、私たちは立ち上がり

失礼のない程度の適当な礼をして席にまた着いた

先生がモゴモゴと話し出したとき私は居眠りの準備をしている将太に声をかけた

「樹、生物忘れるなんてねー」

部員の中で、生物だけは持ってくるのが常識だった

生物の授業は休み時間として使えない

その数少ない眠れない科目の教科書を忘れるのはかなり珍しかったのだ

「誰かに叩き起こされてビックリして忘れてきたんじゃん?」

将太が私を見て笑った

私が反論しようとしたとき、先生に注意をされてしまった

将太はそれをまた笑い、眠りについた