ホストクラブの奥の扉から2階へあがり、さらに奥へ進めば、俺の部屋がある。
古臭い引き戸を開け、畳を隠すように被せた黒い絨毯に寝転ぶ。
6畳半程の部屋。
この6畳半が、俺の世界だった。
この部屋が広いのか狭いのか、他の人間の部屋を見たことがないからイマイチ分からない。
しかし、たとえこの部屋が一般的に見て狭い部屋だとしても、この6畳半は、俺の世界なのだ。
この部屋だけだと、俺は随分と貧乏な奴に見えるらしい(以前店長に言われた)が、こう見えて生活に困ったことはない。
晩メシはさっきの愛子のような女達と食うし、朝メシは昨日の残り。昼は稼いだ金でコンビニ弁当。
風呂もホストクラブにあるのを使うし、
服も、ホスト用のスーツと学生服のみだから、
……困ることはないのだ。
(そう店長に言ったら、「やっぱお前は貧乏少年だな…。ああかわいそうに」と言われた。そんなこと言うのなら、俺から取り上げる給料の額をもう少し下げてくれてもいいと思うのだが……とは言っても、今貰ってる分だけでも十分余ってしまう額ではある。)
部屋の片隅には、客との会話のネタに困らないようにと、店長がおいたテレビ、パソコンがある。
自由に使っているが、テレビはあまり見ない
パソコンは存分に使わせてもらっている。
毎月稼いだ金が店長に取り上げられる訳は、ほとんどパソコンと言っていいだろう。
しかし、それでも中学生の俺には多すぎる金額を毎月貰っていた。
「…………」
この6畳半は、俺の世界だった。
この部屋が広いのか狭いのか、他の人間の部屋を見たことがないからイマイチ分からないが、この6畳半は、俺の世界なのだ。