――某県内。とある夜の街の一角。
「クレイジー!3番テーブル指名入りました!」
「……はーい」
とあるホストクラブで、俺、“クレイジー”は働いている。
「3番テーブル、3番テーブル…あれか。…また、あの女」
3番テーブルに座っていたのは、ことごとく俺に貢いでくる、とある女。
「あ!クレイジーくーん!こんばんはー!」
「こんばんは今夜も来て下さったんですね嬉しいです」
もう俺の中では恒例になってしまった挨拶を一息で言い終えると、
目の前の女はとても嬉しそうに笑う(これも恒例だ)。
「本当クレイジー君って若い顔してるわよね〜いくつだっけ」
「今年で25です」
「へえ〜そっか私と同い年か〜!見えない〜!」
嘘だよ。バーカ。
本当はまだ中3の15歳だっつの。
店長が必死に隠してんだよ。
つーか俺はお前が25歳ってことにビックリだからな。45歳くらいかと思ってた
「そうだ…今日クレイジー君にお土産があるんだよ!」
「そうなんですか、嬉しいです」
またかよ…
「ふふ、嬉しいなら笑えばいいのに!本当クレイジーくんってクールよねえ」
何が嬉しくてお前の為に笑わなくちゃいけねえんだ
「それで…はいこれ!」
その女が俺の前にずいっと押し付けてきたのは、それはそれは高価そうな腕時計だった。
「すごいです。俺のために…うれしい」
「だーかーら、嬉しいなら笑いなよ!ふふふ!」
だーかーら、嘘なんだよ。バーカ。
結局その女はドンペリを頼みまくり(これも恒例)、
俺は飲むフリだけをして、女を酔いツブした。