「何だよ、話したいことって?なんでお前は知ってんだ?」

「まあ、そんな睨まないでよ」

「いいから質問に答えろ。お前アレか?母親とかがホスト大好きなのか?」

「…まあ、いいじゃない。私ね、橘くんのこと知りたいなあって思って」

「…………はぁ?」

何言ってんだ、このメガネは。

「なんでお前なんかに俺を教えなきゃなんねーんだよ」

「だって気になるじゃん?中学生のホストなんて。」

「…言っとっけどお前、このこと、誰にも言うなよ?なんで知ってんのかは知らねえけど」

「分かってるよ。その代わり、私と友達になってね?」

……友達?


「…………友達なんかいらねえんだけど」

「断ったらバラしちゃうよ~」

「………」

なんでこの女は、こんなに俺を苛立たせる方法を知っているんだろう。

「…分かったよ、友達、友達。」

結局、学校に行かなきゃ会わねえんだし。


「やった、私、佐々木若葉!」

「佐々木さんね、覚えた覚えた」

「若葉って呼んでね!」

「それは嫌だ。友達になったんだから、携帯返せよ」

「あれ、いらないんじゃなかったの?」

「うるせーよ」

「それより、名前教えてよ!」

「は?お前知ってるだろ?」

橘くんって呼んでたじゃねーか

「下の名前知らない!」

「…そのうち、教えてやるよ」

「え、なんで?」

「なんででもいいだろ?携帯返せ」

「あ、携帯ねえ、橘くんの下駄箱の奥に隠してあるよ」

「…………………」

ばかか俺は…

なんでそんなことに気付かなかったんだ………。

「…じゃーな。お前、授業にちゃんと参加しろよ」

「あ、待って橘くん」

「?」

歩きだした俺を呼び止めた。

「…本当に、なんで私が橘くんがホストってこと知ってるか、心当たりないの?」

少し真面目な顔で、佐々木は言った。


「…………ねーよ。だから聞いてんだろ」

「そっかあ。んじゃー、気をつけてーバイバイ!」

「……」