いつか、ある男が俺に言った。
…いや、ある男というか、店長に言われた。
『――元気出せよ。
大丈夫だから。な?
お前の父ちゃんと母ちゃんが帰ってくるまでは、
俺がちゃーーんと面倒見てやるからよ。
きっと帰って来るから、それまで俺と一緒に待とうぜ。
まっ、ここにいるからには、ちゃんとこの店の一員として、そのイイ顔で稼いでもらうからな!
…そんなムスッとしなくても良いじゃねえかよ。
………いや、そのマセさがお嬢様方にはウケんのかな?
このひねくれ者が…憎いねえ。
…うん。
お前はこれから、この店での名前は“クレイジー”にすることにしよう。
確かクレイジーには、ひねくれ者って意味もあった気がするからさ。
ん?ダサいか?気に入らねえか?
しかーし、残念ながらもう決定なんだよな。
クレイジーが嫌なら、ちゃんと笑うこった。カッカッカ!
…あ、死んだりしたら駄目だぞ?
自殺ほどダサいことは無いからな。
まあこれからよろしく、“クレイジー”』
あの日から俺は、“クレイジー”になった。
…ダサすぎだろ、バーカ。