「舞ー帰ろ。」

退屈な授業がやっと終わって、部活に行くやつ、しゃべってるやつで、教室はうるさかった。

「ごめん茅衣。私、ちょっと用事あるんだよね…先に帰ってて?」

ごめん、と手を合わせて謝る舞。

「何なに〜?また誰かに呼び出しされてんの?」

このこの、と舞の肩をつつき、教室を出た。

バシッ!
痛っ。あたしの足元には、投げつけられたと思われる手提げが落ちている。
これは…

「こんのクソ真央〜!!」
バシッ!
思い切り手提げを投げ返してやった。

「痛ぇー!お前、力強すぎ!」

痛そうに鼻を押さえ、しかめっ面をする真央。

「自業自得でしょ。ふんだっ!」

そう言ってツカツカと歩きだす。

「おい、待てよ。あれ?舞は?」

追いかけて来て、あたしと肩を並べる。
背はとっくの昔に抜かれてんのよね。

「呼び出しだってー!いいよね、舞はモテモテで。あたしも告られないかなー」
「何お前、彼氏ほしいの?」

真央は意外という顔であたしを見ている。

「そりゃーね!あたしだって、高校生になったんだし?」

ちょっとすまして答える。
「ふーん。まぁ、無理だろうな。お前、バカだからっ!」

「バカにバカって言われなかないわよ〜!」

ま、無理なのは分かってんだけどさ。告られたことなんか、小学生のときだけだし。しかも、その相手ってのが、デブちゃんの冴えない男の子だったんだから…。

チーン。

あたしって、かわいそう?泣