藤岡くんは無表情であたしを見ている。

そうだよ。

淹れてもらう分際のくせになに注文つけてるんだあたし……。




だけど。

「ごめんなさい」と言おうと口を開きかけたあたしに対して、藤岡くんは目を細めて笑ってくれて。




「砂糖目一杯入れてやるよ」




そう言ってドアを開けて、素敵なキッチンがあるであろう部屋のむこうに消えていった。






「……へへ」




……最近、笑顔の回数増えて嬉しいなぁ。




残されたあたしはそんなこと思いながら、軽い足取りで階段を登り始めた。